RTX 3060 12GB の自宅サーバで 125B の Qwen3.8-Flash-Next を動かす ― メモリ80GBに増設と Strata 導入記

はじめに

ローカル AI 用に専用機(DGX Spark や Mac Studio など)を買うかどうか、しばらく迷っていました。 そこへ出てきたのが Strata。総 125B パラメータの MoE モデル Qwen3.8-Flash-Next を、12GB の GPU と 64GB 程度の RAM というゲーミング PC 級の構成で動かせる推論エンジンです。

うちの常時稼働サーバは RTX 3060 12GB を積んでいて、GPU の条件は満たしています。足りないのは RAM だけ。 そこで「専用機は買わず、RAM を足して Flash-Next を動かす」方針に決め、実際にやってみました。

結論から書くと:

  • RAM は 32GB×2 を足して 80GB(DDR4-3000)。種類の違うメモリを混ぜた4枚挿しで少しハマった
  • Strata の IQ3_XXS(3bit 級)で約 62 tok/s
  • 自作の6問テストで、クラウド版 Flash-Next とほぼ同じ品質。手元の Qwen3.6-35B-A3B より明確に上

環境

項目 内容
CPU Ryzen 5 5600X
マザーボード ASRock B550M Steel Legend(DDR4・4スロット・上限 128GB)
GPU RTX 3060 12GB(ドライバ 580)
RAM(前) 8GB×4(32GB)→ Strata には全然足りない
RAM(後) 32GB×2(新規)+ 8GB×2(既存)= 80GB
ストレージ NVMe SSD(モデル置き場に約80GB使用)
OS Ubuntu 24.04

このサーバでは他にも Windows VM(約8GB)や各種常駐サービスが動いているため、「Strata 35〜43GB+VM+OS」で 64GB だとギリギリ、という見立てでした。

なぜ Qwen3.8-Flash-Next なのか

Qwen3.8-Flash-Next は Alibaba Qwen チームのオープンウェイト MoE モデルです。

  • 総 125B/1トークンあたり動くのは 6B(512 エキスパート中 10 個)
  • n-gram 埋め込み 51B と MTP(複数トークン予測)を持つ
  • コンテキスト 262K

アクティブが 6B と小さいので計算は軽い一方、エキスパート全体を置いておく場所(RAM)が大量に要る、というタイプのモデルです。

買う前に、クラウド(API 経由)で手元の候補と比べました。題材は手元の小さな Web アプリ(PHP+素の JS)のコードで、わざと入れたバグの特定3問・実コードのレビュー2問・実装1問(隠しテスト22件)の計6問です。

お題 Flash-Next(クラウド) Qwen3.6-35B-A3B FP8 Qwen3.6-35B-A3B q4(ローカル)
残高を超えて申請できる(abs 抜け) 正解 不正解 不正解
ロック外の読み込みで更新が消える 正解 正解 正解
10〜12月が空になる(substr 位置ずれ) 正解+追加指摘 正解 正解
ポイント処理のレビュー 良 中 弱
保存クラスのレビュー 良 中 弱
実装(隠しテスト22件) 22/22 2/22(タイポ) 22/22

Qwen3.6 は FP8 でも q4 でも同じ誤診をしていて、差は量子化ではなくモデルの地力でした。これで「Flash-Next を手元で動かす価値はある」と判断しました。

補足: 既定設定の Flash-Next は、自由記述のレビューで思考だけに 24,000 トークンを使い切って本文が空になることがありました。reasoning_effort: medium にすると 30〜50 秒で良い回答が返ります。

メモリ増設 ― 混在4枚挿しの落とし穴

買ったもの

DDR4-3200 の 32GB×2(JEDEC 3200 CL22、XMP なし)。もともと 8GB×4 で4スロットが埋まっていたので、8GB を2枚抜いて 32GB×2 を挿し、残した 8GB×2(Corsair Vengeance RGB Pro、XMP 3200 16-18-18-36 1.35V)と合わせて 80GB にしました。

自動設定だと 2133 に落ちる

構成 速度 帯域(memtest 表示) 結果
32GB×2 のみ(自動) DDR4-3200 CL22 43 GB/s 正常
4枚(自動) DDR4-2133 CL15 28.4 GB/s 種類が混ざると JEDEC 標準の 2133 に落ちる
4枚・手動 3200 ― ― メモリトレーニングに失敗し 2133 に戻される
4枚・手動 3000 DDR4-3000 CL22 38 GB/s 合格
  • 4枚挿し(1チャネル2枚=2DPC)で、しかも XMP を持つものと持たないものが混在すると、自動では 2133 まで下がります
  • XMP をオンにすると 8GB 用の CL16 が 32GB 側にも掛かって不安定になるので、XMP はオフ
  • 手動で 3200 を指定してもトレーニングで弾かれたので、一段落とした 3000 に

最終的な BIOS 設定

ASRock の OC Tweaker → DRAM Configuration で手動設定:

  • DRAM Frequency: DDR4-3000(FCLK 1500MHz で 1:1)
  • タイミング: 22-22-22-52
  • DRAM Voltage: 1.35V
  • XMP: 無効
  • その他: Auto

CMOS クリアや BIOS 更新をすると消えるので、手で入れ直す必要があります(メモしておくのが大事)。

memtest86+ で確認

memtest86+ v7.00 を約5時間。1パス完走+2パス目 94% まで Errors 0 で合格としました。 80GB・3000 は 64GB・3200 に比べて帯域が約12%落ちますが、容量優先です。memtest の所要時間も容量÷帯域に比例してだいたい 1.4 倍になります。

3200 に再挑戦するなら、VDDCR SOC 1.10V → DRAM 1.40V → ProcODT 調整 → Gear Down 有効 … の順に詰めていく予定です(今は 3000 で安定運用優先)。

起動後は 78GiB と認識され、4枚とも 3000MT/s で動作。VM や常駐サービスも問題なく立ち上がりました。

Strata の導入

Strata は GitHub で公開されているオープンソースの推論エンジンです。モデルを GPU・RAM・SSD の3層に分けて置くのが特徴で、

  • GPU: よく使う部分と、アクセス頻度の高いエキスパート
  • RAM: 全エキスパート(CPU も並列で計算)
  • SSD: 大きなルックアップテーブル(n-gram 埋め込み)

という分担になっています。さらに MTP による投機的デコードで 1.6〜1.8 倍速くしています。

事前チェック

git clone https://github.com/Niko1221/Strata
cd Strata
./setup.sh --check

RTX 3060 12GB・RAM 78GB・AVX2・PCIe 4.0 x16 を認識し、IQ3_XXS は「約60GB 必要・収まる」判定でした。

インストール

./setup.sh --yes --family qwen --model IQ3_XXS --port 8081 --no-start
  • 量子化は IQ3_XXS(Q2_0 / IQ2_XS より遅いが品質重視)
  • うちでは 8080 を別サービス(Open WebUI)が使っているので 8081 に変更
  • ダウンロードは本体 47GB+29GB、MTP 約5GB
  • この環境向けの配布済みエンジンが無く、CUDA 13.0 で自動コンパイル(約15分) が走りました

起動と実測

cd Strata && ./run-iq3_xxs.sh

OpenAI 互換 API が http://127.0.0.1:8081/v1 に立ちます(127.0.0.1 のみで待ち受け)。

項目 値
読み込み時間 約1分(エキスパート 40GiB を RAM、約5GiB を GPU キャッシュ)
生成速度 約 62 tok/s(手元の Qwen3.6 q4 は約45)
RAM 使用 56〜57GB(残り約21GB)
GPU 使用 11.4GB / 12GB

64GB だと他の常駐分と合わせてかなり厳しかったはずで、80GB にしておいてよかったところです。

品質は落ちたのか ― 同じ6問で比較

3bit 級まで量子化しているので劣化が心配でしたが、同じ6問(reasoning_effort: medium)を解かせた結果がこちら。

# お題 Flash-Next クラウド Flash-Next ローカル IQ3_XXS Qwen3.6 FP8 Qwen3.6 q4
1 abs 抜け 正解 正解(68秒) 不正解 不正解
2 ロック外の読み込み 正解 正解(40秒) 正解 正解
3 10〜12月が空 正解+追加指摘 正解(54秒) 正解 正解
4 ポイント処理レビュー 良 良(123秒) 中 弱
5 保存クラスレビュー 良 良(117秒) 中 弱
6 実装 22件 22/22 22/22(27秒) 2/22 22/22
  • クラウド版との差は見当たりませんでした。Qwen3.6 に対する優位(原因の見極め・レビューの正確さ)もそのまま
  • レビューでは的外れな指摘も少し混ざりましたが、「問題ではない点」をきちんと切り分けるなど、全体としては良い内容
  • 1問あたり 30秒〜2分

ついでに、普段使っているクラウドモデルとも比べました。

# お題 Flash-Next ローカル DeepSeek-V4.1-Flash(クラウド) Gemma-4-31B(クラウド)
1 abs 抜け 正解 正解 △(説明が誤り)
2 ロック外の読み込み 正解 正解 正解
3 10〜12月が空 正解 正解 不正解
4 ポイント処理レビュー 良 良 弱
5 保存クラスレビュー 良 時間切れ(504) 時間切れ(504)
6 実装 22件 22/22 22/22 22/22
1問の時間 27〜123秒 72〜300秒 90〜300秒

質では ローカル Flash-Next ≧ DeepSeek-V4.1-Flash > Gemma-4-31B。DeepSeek との差は小さく、効いてくるのは「速さ(2〜3倍)」と「長い回答でもタイムアウトしない」点でした。

常駐させるための工夫 ― GPU の譲り合い

このサーバでは Strata 以外にも GPU を使うもの(画像生成の ComfyUI、Ollama のローカルモデル)が動きます。Strata はモデルを載せると GPU を 11.4GB 占有するので、そのままだと取り合いになり、最悪 OOM killer が走ります。

そこで「先に使っている方が優先」というルールにしました。

  • strata.service(systemd user)は受付だけ常駐(RSS 約210MB、GPU ほぼ 0)。リクエストが来たらモデルを読み込み(lazy load)、10分使われなければ下ろす
  • 読み込み前に小さなチェックスクリプト(strata-gpu-guard)を実行
    • ComfyUI が実際に生成中、または Ollama がモデルを載せている → 読み込まず 503(Retry-After 15)
    • ComfyUI が起動しているだけ(キューが空・GPU 使用 1GB 以下)→ ComfyUI を止めてから読み込む
    • GPU の空きが 11000MiB 未満 → 503
  • ComfyUI 側には drop-in で、起動前に Strata へ POST /unload?wait=300 を投げる設定を追加(回答中なら終わるまで待ってから下ろす)
    • 待ち時間が systemd 既定の 90 秒を超えるので TimeoutStartSec=360 も必要でした

最初は systemd の Conflicts= で「後から呼ばれた方が勝つ」排他にしていましたが、生成途中で相手を落としてしまうので、上の形に作り直しました。

つまずいたところ

エージェントから使ったら 32K では足りなかった

AI エージェント(Hermes Agent)から Strata を使おうとしたら「Something went wrong」で停止。 原因は、エージェント側が文脈長 64K 未満のモデルを受け付けない仕様だったこと。Strata は VRAM 12GB だと既定で 32K でした。

設定ファイルの --max-context を 65536 にして解決。GPU 上のエキスパートキャッシュが 5.36→4.88GiB に減りますが、速度への影響は体感ではほぼありません。

設定を変えても古い会話は前のモデルのまま

エージェントの既定モデルを Strata に変えても、既存の会話は会話ごとに保存されたモデル設定で動き続けます。新しい会話を始めると切り替わります。 さらに、要約などの裏方処理が自動で Ollama に流れていて、Ollama がモデルを載せる → 上のチェックで Strata が 503 → 自分で自分を締め出す、という状態になっていました。裏方処理の接続先も Strata に揃えて解消しました。

まとめ

  • 専用機を買わなくても、RAM を足すだけで 125B MoE が実用速度で動く時代になった。RTX 3060 12GB+DDR4 80GB で約62 tok/s
  • 3bit 級(IQ3_XXS)でも、6問のテストではクラウド版とほぼ同等の品質
  • ボトルネックは GPU ではなく RAM 容量。DDR4 の混在4枚挿しは自動だと 2133 まで落ちるので、手動設定と memtest は必須
  • 常時稼働機で使うなら、GPU を使う他のサービスとの「譲り合い」の設計が要る

運用としては、定期ジョブ中心のメインエージェントは安定性重視でクラウド API のまま、速さが欲しい対話やコード作業は Strata、という使い分けにしています。 RTX 5060 Ti の追加は、速度が足りなくなったときか画像生成を本格化するときに改めて考えるつもりです。

参考

最近の攻撃ニュースが怖くなったので、自分の公開サーバーを Claude Code に点検させてみた

久しぶりのブログ更新です。

最近、公開サーバーが乗っ取られた、認証情報が漏れた、プラグインの脆弱性を突かれた……という話を本当によく目にします。攻撃側も AI で自動化されてきているようで、「個人サーバーだから狙われない」はもう通用しなさそうです。

このブログが載っているサーバーも含め、私はクラウド(OCI)上にインターネットへ公開しているサーバーを2台持っています。

  • Web サーバー:このブログ(WordPress)、Redmine、自作の小さな Web アプリなど
  • トレード用サーバー:FX・暗号資産の自動売買 bot

半年ほど前に一度、ファイアウォールの整理や fail2ban の導入はしたのですが、それきりです。さすがに不安になってきたので、普段から開発に使っている Claude Code に一通り点検させてみました。その記録です。

※ 記事の性質上、IP アドレス・ファイル名・ユーザー名・鍵やトークンの情報など、攻撃のヒントになりそうな部分はぼかしています。また、紹介するのは対応が終わった指摘だけです(検討中のものは伏せています)。

頼み方:まずは「見るだけ」

いきなり AI に本番サーバーを触らせるのは怖いので、最初の依頼ははっきり 読み取り専用 にしました。Redmine にチケットを1枚切って、そこにこう書いています。

  • やること:両サーバーの読み取り専用の点検(待ち受けポート、sshd 設定、ファイアウォール/fail2ban、更新状況、サービス、ファイル権限、ログ)、外部からの見え方の確認、改善案を優先度つきで一覧に
  • やらないこと:設定変更・再起動・パッケージ更新(直すかどうかは私が判断して、別チケットにする)
  • 完了条件:点検結果と改善案(重大度・対応案・影響)をチケットに書いて報告

Claude Code は自宅の常駐マシンから SSH で両サーバーに入り、設定ファイルやログ、パッケージの状態を順に読んでいきます。外からの見え方(どのポートが開いているか、どの URL が見えてしまうか)も別途確認していました。

結果がチケットに書き込まれるまで、だいたい7分。


点検結果

まず結論から。

両サーバーとも、乗っ取られた痕跡は見つからなかった(SSH の成功ログインは全期間すべて自宅から)。 ただし Web サーバーには 「Web が1か所破られると、サーバー丸ごと取られる」構造がある。トレード用サーバーは比較的きれい。

ひとまずホッとしつつ、後半の一文にヒヤッとしました。指摘は優先度(高・中・低)つきで十数件。このうち、すでに対応が終わったものは次のとおりです。

優先度 対象 指摘(要約)
高 Web Web サーバーの権限から root まで上がれる経路がある
高 Web Redmine がサポート切れの版のまま(セキュリティ修正が未適用)
高 Web 誰でも読めるファイルに認証トークンが平文で書かれている
中 トレード 稼働145日、カーネル更新が再起動待ちのまま
中 Web 使っていないサービスが外向きに待ち受けている
中 Web WordPress まわり(デバッグログが誰でもダウンロード可、管理者ユーザー名が外から分かる、ログイン試行制限なし、更新待ちプラグイン)
中 Web fail2ban が SSH しか見ていない(メール認証などは総当たりし放題)
低 両方 sshd で使っていない機能・古い暗号方式が有効
低 Web Apache/PHP のバージョン表示、ディレクトリ一覧が見える、HSTS なし
低 Web メールサーバー設定に昔の自宅 LAN の設定が残っている

「問題なかった点」もちゃんと列挙してくれていて、パスワード認証無効・root ログイン禁止、DB はローカルのみ、設定ファイルの権限、TLS 1.2/1.3 のみ、証明書の自動更新、自動セキュリティ更新、WordPress 本体は最新……などは合格でした。半年前にやったことはちゃんと効いていたようです。

一番ヒヤッとしたもの:Web 権限から root へ

これは自分では絶対に気づかなかったと思います。

Redmine のインストール先が Web サーバーのユーザー(www-data)の持ち物になっていて、その一方で、root で毎朝動く定期ジョブと、sudo で許可していたコマンドが、そのディレクトリの中身を root として実行していました。

つまり、WordPress のプラグインの脆弱性などで www-data の権限を取られると、そのディレクトリに細工 → 翌朝 root で実行される → サーバー丸ごと、という道筋ができていたわけです。どれも「動かすために」その場その場で設定したもので、組み合わさった結果こうなっていたというのが怖いところです。

芋づる式に出てきたもの:平文トークン

「誰でも読めるスクリプトに GitHub のトークンが直書きされている」という指摘を掘っていくと、いろいろ出てきました。

  • そのスクリプトを動かすはずの定期ジョブは、ログの書き込み先が無くて 約半年前から一度も動いていなかった
  • そのトークン自体は失効済みだったが、別の有効なトークンが、Redmine が参照している Git リポジトリの設定ファイルに埋め込まれていて、そのファイルも誰でも読める状態だった
  • GitHub から Redmine へのコミット通知(webhook)は、最近ずっとエラーを返していた。原因はコミットメッセージの絵文字で DB への書き込みが失敗していたこと(セキュリティとは無関係ですが、ついでに見つかった)

「点検」のつもりが、半年放置していた不具合の発見にもなりました。


直した:判断は人間、作業は AI

報告を読んで、優先度の高いものから順に「これは直して」と指示しました。1件ごとに Redmine のチケットを切り、やること/やらないこと/完了条件を書いてから作業させています。

指摘 対応
Web 権限→root の経路 アプリ本体を root 所有にし、Web 側が書けるのはデータ置き場だけに。定期ジョブは Web 権限で実行、sudo の許可を削除
平文トークン 止まっていた定期ジョブとスクリプトを撤去。リポジトリごとに読み取り専用のデプロイキーを作って差し替え、不要になったトークンはすべて削除
カーネル更新待ち bot への影響が小さい時間帯にパッケージ更新+再起動
Redmine が古い まず 5.1 系の最新に上げて穴を塞ぎ、そのあと 7.0 系へ移行
WordPress まわり デバッグログ削除・無効化、プラグイン更新、ユーザー名が外から分からないように
fail2ban メール認証・WordPress ログインの監視を追加、何度も来る相手は長期 BAN
その他(中・低) 不要サービス停止、sshd の不要機能と古い暗号方式を無効化、バージョン表示を止める、ディレクトリ一覧を無効化、HSTS 追加、HTTP→HTTPS 転送、メール設定の残骸を削除

いくつか、やってみて分かったことを書いておきます。

AI でも「人間がやるしかない」部分は残る

GitHub のトークン削除や Redmine の管理画面での設定変更は、Claude Code ではなく私が操作しました。Claude Code は「どの画面で何をすればよいか」と「消す前に他で使われていないか」の確認までやって、ボタンを押すのは私、という分担です。

また、一部の設定変更は Claude Code 自身の安全判定で止められて実行されませんでした。慎重すぎると思う場面もありましたが、本番サーバーを触らせる以上はこのくらいでちょうどいいのかもしれません。

Redmine 7.0 への移行は、別の AI と隔離環境で

メジャーバージョンを2つ飛ばす移行は不安だったので、まず本番のコピーを隔離環境に作って移行と巻き戻しを試すところからやらせました(こちらは OpenAI の Codex に担当させています)。

その結果、Redmine 本体の移行は問題ないものの、

  • 使っているチェックリストのプラグインが新しい版でそのままでは動かない
  • アプリサーバー(Passenger)の古い版に、新しい Rails と組み合わせると Cookie の扱いを誤る不具合がある

ことが本番を触る前に分かりました。互換修正と更新を入れて再検証してから本番切り替え。1回目の切り替えはファイル権限の問題で途中で止まりましたが、手順どおり旧版に戻して、直してから2回目で成功しています。途中で Codex が利用上限に達して止まり、Claude Code が引き継いで最終確認をする、というリレーもありました。

やらかしも1件

WordPress に小さなプラグインを1つ置く作業で、Claude Code が SSH 越しにファイルを書いた際に引用符が抜けてしまい、ブログ全体が約1分間エラー(500)になりました。すぐに外して復旧し、「手元でファイルを作る → 構文チェック → 配置」の順でやり直しています。

AI に限らず人間でもやる類のミスですが、「本番に置くファイルは手元で作って検査してから」というのは改めて教訓として残しました。


やってみての感想

  • 点検そのものは驚くほど速い。 2台分を読み取り専用で一通り見て、優先度つきの報告が出るまで数分。自分でやったら丸1日はかかるし、たぶん権限の組み合わせの問題には気づかない
  • 指摘の質が高い。 「なぜ危ないか」「どう直すか」「直すと何が困るか(自分が締め出されるリスクなど)」までセットで出てくる。直すかどうかを判断する材料がそろっている
  • ついでに不具合も見つかる。 半年止まっていた定期ジョブ、ずっとエラーになっていた webhook など
  • 任せ方が大事。 最初は読み取り専用、変更は1件ずつ承認してから、作業前にバックアップ、作業後は外からの見え方で確認。この型にはめておけば、本番サーバーでも安心して任せられる

朝に頼んで、夕方には中・低の改善と Redmine のメジャーアップデートまで終わっていました。

個人でサーバーを公開している方は、一度「読み取り専用で点検して、優先度つきで改善案を出して」と AI に頼んでみることをおすすめします。少なくとも私は、もっと早くやっておけばよかったと思いました。


おまけ:今回の点検項目(自分用チェックリスト)

  • [ ] 待ち受けポートと、外から実際に見えるポート
  • [ ] SSH:パスワード認証・root ログイン・不要な転送機能・古い暗号方式
  • [ ] ファイアウォールと fail2ban(SSH 以外の入口も見ているか)
  • [ ] OS/アプリ/プラグインの更新状況、再起動待ちのカーネル
  • [ ] Web の実行ユーザーが書けるファイルを、root が実行していないか
  • [ ] 誰でも読めるファイルに、パスワードやトークンが書かれていないか
  • [ ] 公開ディレクトリに、ログ・バックアップ・残骸ファイルが置かれていないか
  • [ ] ユーザー名やバージョンなど、外に出さなくていい情報が出ていないか
  • [ ] 使っていないユーザー・鍵・トークンが残っていないか
  • [ ] 定期ジョブが、実際に動いているか